チンキ剤とは?
皆さんはチンキ剤って聞いた事、ありますか?チンキとは、ハーブをアルコールに浸して、成分を抽出したもので、英語ではティンクチャーと言います。ハーブティーでは抽出できない、脂溶性成分や揮発性成分を抽出できるので、古来から、薬などに使われてきました。
チンキ剤の始まり
ハーブを薬として使っていた事は、紀元前 古代エジプトの医学書「エーベル・パピルス」にも記されていて、今では、麻薬として禁止さえれているアヘンで有名なケシも子供の夜泣きに使われていた記録なども残っています。この時代既に、葡萄酒にハーブを漬け込んだ薬酒を利用していたとの記録もあるようで、これが、リキュールの起源となったとも言われています。その後、西暦1年ローマ時代には薬物、医学博士であったディオスコリデスが、彼の著書「薬物誌」にハーブをお酒に漬ける技術を著し、その後、これを薬剤として体系化したのが、クラウディス・ガリレスです。彼の作った、ワインにハーブを入れて作る薬酒がチンキの始まりと言われています。ガレノスはハーブの調合などをきちんと記すると共に、薬酒以外にも、錠剤、軟膏など研究を行いました、これが現在の薬剤の基礎を作ったと言われています。彼作った薬剤は「ガレノス製剤」と呼びばれています。
中世でのチンキ剤
ハーブをアルコールに漬け込む技術はその後、修道院で守り作られ続けられます。当時に修道院は宗教の普及と言う役割だけでなく、病院、薬局などの役割を果たしていました。特にハーブにアルコールと氷砂糖を加えて作るお酒は、現在のリキュールとして、レシピが受け継がれています。
蒸留の技術
現在、私たちがチンキ剤を作るのには、主にウォッカ、スピリタス、などの蒸留酒を使いますが、ディオスコリデスやガレノスの時代にはありませんでした。ですので、この頃の薬酒は果物などを発酵させてつくるお酒にハーブを混ぜて作るのが一般的でした。
蒸留酒が誕生したのは、8世紀頃、アラブで、シャービル・イブン=ハイヤーンが、蒸留する事で、アルコール度数の高い液体を採取できる事を発見しました。蒸留酒の誕生によって、現在のウォッカ、ウイスキー、ブランデーなどのお酒が登場していきます。
東洋でのチンキ
東洋でのチンキの始まりは三国志の時代、神医であった華佗が酒好きの曹操のために考案した「屠蘇」がチンキの始まりだそうです。屠蘇の正式名称は「屠蘇延命散」だそう。魂を打ち負かし(屠)、蘇らせる(蘇)の意味が込められているとの事です。
日本でチンキを利用したのは「平安時代」、その後、宮中行事として、お屠蘇を振る舞う習慣が定着したそうで、紀貫之「土佐日記」に描かれているそうです。その後、縁起ものとして、民間にも飲む習慣が定着していったようです。
家庭でのチンキ剤
現在でも、びわの葉、柿の葉、どくだみの葉 チンキ剤など、お婆ちゃんの薬箱というべき チンキ剤が存在しています。
チンキ剤は薬として飲むだけでなく、
化粧品、消臭スプレー、虫除けスプレー、入浴剤、など。用途は数多くあります。
脂溶成分と水溶性成分
植物に含まれる有効成分には、水に溶けやすいものとそうでないモノがあります.
例えば、人参に含まれ、抗がん作用や、傷修復作用があるとされるカロテノイドは、脂溶性で、水には溶けずらい性質があります、ですから、カロテノイドを効率よく採るには、油を使った炒め物、ドレッシングを掛けるなどすると吸収がよくなります。
反対に、赤、青、紫などの色素成分であり、視力改善効果や抗炎症作用があるとされるアントシアニンですが、水溶性で水に溶けやすい性質を持っています。バラは、ティーにすると、ほんのり色づくのに対し、バラの花をオイルに浸けても、赤いオイルは採れません。
チンキ剤を上手に活用しよう
アルコールで抽出することで、脂溶性分と水溶性成分のどちらも効率よく抽出する事ができます。
例えば(ざっくりですが)、アルコール40度 のウォッカで 植物の成分を抽出すると 40%の脂溶性成分と60%の水溶性成分が抽出出来る事になります。
植物全般に含まれる葉緑素(クロロフィル)は脂溶性です。アルコール99%のスピリタスを使って抽出すると、このクロロフィルが多く採れるので、とても綺麗なグリーンのチンキができあがります。
冬に役立つチンキ剤のレシピ
おうちにある緑茶でチンキを作ろう
ウォッカ 100ml
緑茶 3g
蓋付きのガラス瓶に入れて二週間漬け込む。二週間経ったら、葉を漉して出来上がりです。冷暗所で一年保存可能
緑茶の主な成分 カテキン クロロフィル カフェイン ビタミンC
抗菌作用があるので、うがい薬 始めは 100ccに1〜2滴から(30倍から100倍くらいと言われています)
化粧水に 精製水90ccにチンキ5〜10cc(アルコールに弱い方は薄めに) お肌のきめを整えてくれます。
お料理にも カテキンがお肉を柔らかくしてくれますので、お酒の代わりに使ってみて下さい。
これから先はご興味がある方はご覧下さい
ハーバルセラピスト試験対策memoです
試験対策のmemoとして
ヒポクラテス(BC 400年) 薬草を使って医学精神の種をまく (体液病理説)
ディオスコリデス(AD 100年) 600種の薬草を著す(マテイアメディカ)
ガレノス(AD 200年) 500種以上の薬草を使用して「ガレノス製剤」を作る)
薬の剤型(シニアハーバルセラピストの問題)
<経口液剤>
甘味と芳香のあるエタノールを含む澄明な液状の経口薬 エレキシル剤
甘味と酸味のある澄明な液状の経口薬 リモナーデ剤
※エレキシル剤は現在でも調剤されるようですが、リモナーデ剤は使われないようです
<シロップ剤>
糖類または甘味料を含む粘稠性のある液状または固形の製剤 シロップ剤