化学的結合によって結びついた糖分子の重合体


化学的結合によって結びついた糖分子の重合体(結合して鎖状や網状になる)を一般に多糖類といい、単糖{D-グルコース(ブドウ糖)、D-フルクトース(果糖)、D-ガラクトース(乳糖などのオリゴ糖など含)}が10個以上連なったものをいいます。
単純な構造(単純多糖)の多糖類の代表がセルロース、デンプンなどで、複数の単純多糖の連なりで構成されている複雑な構造の多糖類(複合多糖)の代表的なものが植物ではアラビアゴム、カンテン、動物性のものではグリコーゲン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などがあります。

主な単純多糖類
グルカン(グルコースで構成されている多糖類)
 セルロース 自然界で最も多く存在する炭水化物であり、植物の細胞壁の構成成分です。セルロースは繊維素と呼ばれ、レイヨンなど、繊維の原料になる他、乳化剤として、食品添加物としても使われています.
 デンプン 主に植物の地下茎、根に蓄えられている多糖類です。デキストリン(デンプンを分解して低分子したもの)も含め、主に賦形剤(薬の形を整えるもの)、糊剤に使われています。
 ペクチン類 リンゴなど多くの柑橘系の果実に含まれているガラクツロン酸(ガラクトースが酸化したもの)を母体とする多糖類です。不溶性のペクチンが水溶性に変換されてゼラチン質へと変わります。ペクチンには毒性やコレステロールを取り込み、膨張性弛緩剤(便秘改善剤)として働く作用がある事が解っています。

フルクタン(フルクトース(果糖)を構成とする多糖類)
 イヌリン イネ科、ユリ科、キク科に多くみられます。血糖値を安定させ、利尿作用、免疫機能刺激作用ある事が解っています。ダンデライオン(タンポポ)の根、バードック(ごぼう)などに含まれています。

主な複合多糖類
植物のゴム類
植物が樹皮に損傷を受けた時にその部分を修復するために分泌した滲出液にゴム質は多く存在します。化学的には糖の鎖が枝分かれ状に繋がった形もしくはウロン酸(糖が酸化したもの。アルデヒド基(-COH)を有する単糖類)から構成されています。代表的なものでは、アカシア属の植物からとれる、アラビアゴム、ゲンゲ属からとれる、トラガセントゴム、サクラ属からとれるプルナスゴムなど。また、種子の内乳(種子が発芽する際に養分を供給する胚乳組織の一部)から得られるシードゴムなどもあり、タマリンド、イナゴマメなどから抽出されます。
 ゴム類は水に溶かして、粘膜の保護するシロップになりますし、油脂に対しても乳化剤に役割も果たします、古くからオーストラリア先住民の間で、アカシアゴム(アラビアゴム)は咳止め、風邪など、軽症の病や皮膚の保護などに盛んに利用していたとされています。
海藻のゴム類
ゴム成分は、カンテン(紅藻)、ケルプ(褐藻)など、海藻の葉にも存在しています。成分として含まれるアルギン酸は海藻のぬめり成分で、血中の余分なコレルテロールや糖分に吸着して排出する働きがあり血流改善効果など期待されています。

補足 免疫機能刺激作用について
多くの多糖類はサイトカイン(細胞から産生される生理活性物質)の働きを活発にすることが解っています。マイタケ、レイシ、シイタケなど菌類に含まれる多糖類(βグルカン)は抗腫瘍、抗炎症、免疫機能調節作用があり、特にレイシなどは多くの悪性腫瘍に対して活発な働きかけをする事が解ってきています。
免疫を賦活させるのは菌類だけではなく、キク科のハーブ、エキナセアなどにも多く含まれます。近年では、朝鮮人参や、当帰に含まれる多糖類にも抗潰瘍作用がある事などが次々と実証されています。